監督:阪本順治
原作:福井晴敏 『亡国のイージス』 (講談社)
脚本:長谷川康夫、飯田健三郎
音楽:トレヴァー・ジョーンズ
出演:真田広之、中井貴一、佐藤浩市、寺尾聰、光石研、谷原章介、他
データ:2005年/日本/127分 [日本ヘラルド、松竹]
鑑賞方法:レンタルDVD
評価:★★★★☆
[ストーリー]
東京湾沖で訓練中の海上自衛隊イージス艦「いそかぜ」で、艦長が何者かに殺害された。宮津副艦長は、先任伍長の仙石に、犯人が如月一等海士であると告げ、乗務員を艦から退去させる。しかし宮津は、某国の対日工作員、ヨンファと共謀し、特殊兵器「グソー」の照準を東京首都圏に合わせていた。その頃陸では、防衛庁情報局の渥美たちが対策に乗り出す。なす術を失った政府は、米軍の新型爆弾を使い、「いそかぜ」を空から消滅することを検討しはじめる。
(USEN)
[インプレッション]
海上自衛隊のイージス艦を舞台とした物語。実はただいま稽古中の舞台『花散る海』の設定と告示してまして・・・というかほぼ同じなので非常に感慨深かったです。飛び交う専門用語や自衛官の所作など、個人的な見所がとっても多かった今回のレビューはボク個人の”海上自衛隊補正”がかかっていますので、それをふまえてお読みください。
テーマとなるのは現在の日本における自衛隊のあり方と、専守防衛について国家の国防という考え方とその最前線に立っている自衛官達の人間描写。まぁつまり「平和ボケ日本」に警鐘を鳴らしているわけですね。
と、テーマが非常に壮大なんですが、メインとなる人物の人間性がしっかりとストーリーに反映されいるのでわかりやすいし、感情移入しやすい。
悪く言うと全体的に地味なんですが、言い方を変えるとすごくリアルに作り込まれています。作中で流れる重厚な音楽も全体を重くしている要因なんですが、そのスローテンションについていける集中力があるならば非常に楽しめるはず。さらにそこがクリアできれば、役者の芝居が本当にうまいので終始緊張が漂っていて、どんどん見入ってしまうでしょう。
基本的には政府側の取引における駆け引きが見せ場なのかと思えば、きちんと艦内で話しが進んでいくし、展開も引き込まれとてもおもしろい。
しかも、それぞれの自衛隊としての目的や考えかたが介入してくるので重いテーマながらしっかりと話しの中で見せようとしているのは好感が持てた。つまり、ただのアクション映画ではなく、プロパガンダ的にこの作品をまとめている点だ。もちろん原作小説ではそういう話しなのだが、映画化とは何億もの制作費と豪華キャスト、プロモーションが介入するので、そうはいかなくなってくる。
しかし、エンターテイメントせいを省き無骨に、そして限りなく忠実 (リアル)に描くことに意味があると思う。そして、それぞれの『守る』という主張を交錯させていく後半の展開は何とも考えさせられる。もちろん、今の自分の舞台も重ねて観ていたので。
「楽しかった?」と聞かれると、ストレートにおすすめは出来ないが、個人的にはこれでもかというくらいのこだわりが詰まった良作として、この場に書き記しておきたい作品だ。
コメント
タイミングいいなあ。
俺も昨日観たばかりだ(笑)
個人的には若手役者の勝地涼くんの芝居、中井貴一さんと真田広之さんの絡みの新鮮さに「おぉ」と思いました。
>>コバ・ジュン さん
>個人的には若手役者の勝地涼くんの芝居、中井貴一さんと真田広之さんの絡みの新鮮さに「おぉ」と思いました。
ボクも勝地涼さんの芝居は注目してました。
というよりも、真田広之さんの上官役がほんとに良くハマっていて、
部下との関係をより引き立てて (成立させて)いたので、うなってしまいました。
中井貴一さんはああいう役やらせると本当に怖い。
淡々と醸し出すあの迫力はすごいですね。
今のボクの芝居とは全く対極です。
ああいうチャンネルが欲しい・・・。