監督:李相日
製作:島谷能成、服部洋、町田智子、北川直樹、宮路敬久、堀義貴、畠中達郎、喜多埜裕明、大宮敏靖、宇留間和基
プロデューサー:仁平知世、川村元気
エグゼクティブプロデューサー:市川南、塚田泰浩
ラインプロデューサー:鈴木嘉弘
原作:吉田修一 『悪人』
脚本:吉田修一、李相日
撮影:笠松則通
美術:杉本亮
美術監督:種田陽平
編集:今井剛
音楽:久石譲
音楽プロデューサー:岩瀬政雄、杉田寿宏
スクリプター:松澤一美
ヘアメイク:豊川京子
衣裳デザイン:小川久美子
照明:岩下和裕
装飾:田口貴久
録音:白取貢
助監督:久万真路
出演:妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明、宮崎美子、松尾スズキ、光石研、余貴美子、塩見三省、井川比佐志、永山絢斗、中村静香、韓英恵、山田キヌヲ
データ:2010年/日本/139分 [東宝]
鑑賞方法:ワーナー・マイカルつきみ野 (7番シアター)
評価:★★★★☆
[ストーリー]
若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……。
(シネマトゥデイ
[インプレッション]
とても地味です。タンカーも爆発しないし、小人も出てきません、ましてや撃ちあいなんかもないし、ゾンビも1体も出てきません。
しかし、残酷なほどリアルで説得力があります。
まず驚いたのはその台詞量の少なさ。情景というか、雰囲気を大切にしているんだろうけど、こういう映画でしっかりとこの”間”を使いきれるのはこの役者陣があってこそだと思う。
いくら間があっても全く間延びしないで見せられ、しっかりと見せておけることの出来る役者はそうはいないでしょう。
予告文句だけ見るとこの映画は、殺人を犯してしまった犯人に、必要以上の同情や連帯感、愛情などをもってしまう「ストックホルム症候群」の典型的な内容かと思うだろう。
しかし、決してそう見えない理由がいくつもあって、きっかけを作ってしまう大学生や殺されてしまってもしょうがないと思える女にすら共感できる点がある。もちろん殺めてしまった主人公にもだ。
それはいつ自分の身に降り掛かってもおかしくない、恐ろしく地味でリアルな説得力を生み出している。
はっきり言って、逃亡している犯人に肩入れしてしまい、互いに身を寄せ合って愛を語りだすなんて、しっかりと心情を見せていかないと”勝手に盛り上がっている2人”にしか見えない。だがそう見せない説得力と芝居をしているので、悲しさと、後悔、そしてどうしようもないという感情が苦しいくらいに伝わってくる。
“悪人”と言われ、世間ではこのひとことで片付けられてしまう事件が、実際にこの世の中にはいくつあるんだろう。
ネットやテレビのニュースメディアによって世間はあまりに狭く、意見が偏っていようがそのメディアでそう伝えられればそれが”正しい”と言われる。大多数がそう思う”説得力”があるからだ。
そういった断片化した情報だけを拾って、事実、全貌だと思い込んでいる人たちはボクを含めとても多いと思う。
そういった意味では、僕らはこの映画の登場人物の誰にもなれるし、なる可能性がある。どの立場になってみても、とことんリアルで悲しいどうしようもなさと、切なさがあります。
この映画は登場人物それぞれが、それぞれの”救い”を求めている映画です。
その”救い”がどのようなものであれ、生きています。
殺人という事件をテーマにした生きることを見せつけられる映画でした。
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コメント
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