藤波克美 (舞台『どのツラ下げて』のまとめ記事ですよ)

Theatre劇団子
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『どのツラ下げて』終幕!2018年7月4日(水)から7月8日(日)まで本番だった、Theatre劇団子 劇団創立25周年記念 33rd act『どのツラ下げて』の振り返り、まとめ記事でございます。
ご来場いただいた皆様、来れなかったけどもご声援を頂いた皆様、改めて本当にありがとうございました!
本公演は全日程満席で終えることができました。
振り返りの記事や裏話、役についてなど書いていくと膨大な量になるんですが、画像もあるのでサクッとまとめていきたいと思います。

『どのツラ下げて』は落ちぶれてしまった旅一座、「ゲンゴロウ一座」を舞台にした”劇団“のお話で、初代座長が亡くなってから突然戻ってきた元二代目座長が巻き起こす、劇団に関わるものの人間関係や過去の因縁、ドラマなど群像劇を描いた劇団子らしい会話劇となります。
悲劇と思われがちなあらすじも、内容を見て頂ければ分かる通り喜劇を織り交ぜながらの笑って泣けるハートフルコメディでした。

演じたのはこんな役。

藤波克美

今回ボクは藤波克美 (フジナミカツミ)という役でした。劇中では藤波さんとかカッチャンと呼ばれ、ゲンゴロウ一座では最古参の劇団員として先代座長や前の女将さんなど、過去の人物をを知る人間としておりました。
実は新人劇団員との絡みはあまりなく、物語の根幹に関わってくる過去の話などに同一人物として出ておりました。

そうです、今回古参劇団員の50歳以上のシーンから回想シーンでの19歳の若手の頃など、年齢の幅がとんでもなく広い役でした。どちらも同じ人間として出るので、老けメイクから若い頃に戻したり、更にそこからまた老けたりと、年齢の行ったり来たりをかなり多くしておりました。

現代

物語上の時系列で言う「今」なので、50過ぎの古参劇団員です。
前回も歳をとった役を全くやったことがなく一番の苦手といっていたのにかかわらずのこのキャスティング。
そういう意味では公演稽古が始まってからずっと課されていました。
普通にしていると若く見えてしまうので、髪を上げ、メイクで白髪シワを足しました。結構いけるもんですね。
公演を重ねるごとに白髪がどんどん上手くなりました(笑)。

大物ぶっているくせに実はめんどくさいと劇団員に敬遠されるタイプの人間で。本人はひどく不器用。一見渋くてかっこいいこと言ってるんだけど、行動が伴ってなかったり実は内心バクバクだったりするという人間です。

登場してすぐの喪服を着ているシーンでも尿漏れしてズボンビッチャビチャにしてしまったり。

それでも本人の中で譲れない信念や想いはあって、それが理由でこの一座にずっといます。
「金で割り切るくらいならとっくにやめてますよ…劇団なんて」

その理由はあとで説明するんですが、ある過去をずっと背負って生きている人間です。

若い頃

回想シーンでは物語に関わる重要な事件があって、そこに絡む人間として若かりし頃の藤波克美も登場しました。
コチラはメイクなどわりとそのままで、格好だけ和服だったので差別化しやすくそういう意味ではやりやすかったです。

とにかくバカで不器用な人間で、まったくなにもできないポンコツなんですが、そんな自分にも優しくしてくれ慕い合っていた唯一の人間が現代で女将を努めている斉藤範子さん演じる棚橋明子こと「アキちゃん」です。

そんな一座でできた想い人が座長トラウマ級の奪われ方をしてしまい、歪んだ精神構造に拍車をかけます。

それでも芝居しかできない、ここでしか生きられないと思い込んでいる不器用な人間で、アキちゃんのためと二代目の母親である日向子を手にかけてしまいます。

これが今回の物語の根幹にある重要な事件になります。

このシーンはとにかく初めてづくしでした。わりと人の生き死にのシーンはやっていることもあるんですが、今回は演出からアウトプットの方向が明確に出され、自分のなかではそれがとても新鮮で、新しい景色が見えるものでした。

これは今回自分にとってはチャレンジでもあり、僥倖でした。演出との化学反応のような新しい色を感じ、そのイメージに近づけるための戦いでもありました。

求められているものと自分が出力しているものの違いもわかっているんですが、「制御をしない」という芝居が、求められているものを考え、やるということ自体がすでに制御してしまっている状態なので。

フラットにフラットにと毎日シーンの直前はボーッとしており、演技中は時折吐き気をもよおすような感覚の時もありました。
なんだか書いているととっても大変なんですけど、こなしている回は1回もなかったのであっという間に終わっていたという印象。
そういう意味では本番は生々しく生きられたのかなぁと。

稽古中はそのシーンをやる直前までに身構えるのが自分でも嫌でしょうがなかったんですが、小屋に入ってそれがなくなりなんだか漠然とした安心感で本番に望んでいました。

どこまで意識を沈められたかはわかりませんが自分のいままでの芝居の中でもとても特異な体験をさせてもらいました。
ありがとう、カッチャン!

人を殺して生きていく

そんな過去を背負った人間としての現代の藤波克美はなんだか達観して見えるようでいてとても脆い存在です。
それでもこのゲンゴロウ一座、稽古場にいるっていうことの意味や、人間の汚さ、そんなぐちゃぐちゃな感情が絶えず渦巻いていて、内包した上でラストシーンを迎えます。

ラストシーンは事実を知った二代目がいままで劇団に在籍した人間の名前を互いに呼び合っていく一騎打ちを提案してきます。
お互いに名前を呼び合っていき、どちらかが言えなくなるまで続けるというシーン。

この名前、実際20~30人づつくらい言い合うんですが、気づいた方も多いと思いますがこの名前、実際にTheatre劇団子に在籍したり関わっていた人たちの実名を言い合ってました。

最後の最後、二代目が復讐に選んだのは刺し違えるような戦いではなく名前を呼び合うという異質なシーンなんですが、これがここまでの物語と役の感情を入れるととんでもなく感動するシーンに。
お客様からも感動するシーンと好評だったようです。

決着は藤波が敗れ、ずっとずっと背負ってきた罪を白状し「謝罪」します。
もうこの劇団には関われなくなり、ある意味一番残酷な復讐にも見えますが、この、正面から聞いてくれる、謝ることができる人間がいること、謝れる機会を得られたことこそ、藤波にとっては救いだったのかもしれません。

主宰の石山さんからTheatre劇団子の役者の実名を言い合うと言われた時、膨大な量の人名を記憶することになるので大変なことではあるんですが、Theatre劇団子でしかできない25周年作品のなかで、いままでの歴史やそれを紡いできた人たちを背負わせてもらえるこの台詞をもらえたことが純粋にとても嬉しく、「もし途中言えなくなったら架空の名前でも成立するのでOK」とは言われてましたが、とにかく実名でいこうと個人的に考えておりました。

というわけでこのシーンは藤波ではなく、斧口にとって最も重要な台詞でもありました。
正直言ってしまうと台本をもらったばかりの時はこの言い合いがラストで盛り上がるのか、どのように見えるのかがわからなかったんですが、演出と相手役、そして音響や照明がついてみると、お客様からの反応で安心したのをよく覚えています。
そういう意味では今公演はそういったお客様の反応もあって初めて完成する25周年記念公演だったと思います。
この舞台を観てくれて、”なにか”を感じていただけた皆様、改めてありがとうございました!
その”なにか“のために僕らは全力で舞台を創っております。

おまけ

実は劇中ちょろっと出演する先代座長の回想シーン、劇中劇で殺陣をやっておりました。
トンデモ外国人の設定で、当時の下っ端劇団員の一人。劇団子で殺陣をやるのは非常に珍しいとのことです。

特別イベント

特別イベント公演!今回の公演は実は2本立て、平日昼の2回は『特別イベント』と称していままでの劇団子作品43作品をその場で現劇団員が演じていくというイベントを行っておりました!

各作品のワンシーンを様々な役者が演じていくんですが、全員分の割り振られた役を網羅していくと膨大な量になってしまうのでボクのやっていた作品と役だけでもサクッとご紹介していきます。
このイベントで使った全作品リストは別記事にて紹介しております。
Theatre劇団子の25年間全43公演をまとめてみた

ほんの2ミリ泣いた夜には: 刑事

第5回公演 『ほんの2ミリ泣いた夜には』
最初に駆け込んでくる刑事の役。

たとえばナイスな昼下がり: 椎名

第8回公演 『たとえばナイスな昼下がり』
金田と恩田との会話。「牛丼記念日!」。

星降る夜のスタジアム: 全員

第11回公演 『星降る夜のスタジアム』
会議の始まりの歌をみんなで歌いました。

銀座でワイドショー: ディレクター

番外公演 『銀座でワイドショー』
冒頭のシーン。ツッコミをするディレクター。

だからジョニーは殴られる: 服部

第13回公演 『だからジョニーは殴られる』
最後の方のシーンですね。

公園で逢いまショウ: 父

第16回公演 『公園で逢いまショウ』
猫爺とのシーン。「エレファント!」。

君とボク: 生徒

第17回公演 『君とボク』
小学生をやっておりました。

カーラヂオが終われば: 馬場

第18回公演 『カーラヂオが終われば』
あの馬場くん!あの馬場くんと桜井くんとのシーンです。

ペダルをめっちゃ漕ぐ: 佐伯

第20回公演 『ペダルをめっちゃ漕ぐ』
冒頭の社長とのシーン。

東京のオトコ: 馬場

’09春の番外公演 『東京のオトコ』
ボクも実際演じたことがある馬場くんの最後の告白シーンでした。

もう一つのシアター!: 全員

第25回公演 『もう一つのシアター!』
キャスト全員で指差し発声をしました。

そのペン書けず。: 黒岩

第26回公演 『そのペン書けず。』
冒頭の新聞記者、橋本とのシーン。

恋するロビンソン: 間宮

第28回公演 『恋するロビンソン』
終盤、かぐやが月に帰るシーンです。

落人たちのブロードウェイ: 全員

第29回公演 『落人たちのブロードウェイ』
落ち武者をやりました。カツラかぶって踊りました。

14シーン、10役

ちゃんとシーンとしての台詞がある役は10役、全員参加などのダンスや歌などで関わるシーンは全部で14シーンでした。
こうしてみると結構なボリュームですね。
舞台セットがゲンゴロウ一座の稽古場ということだったので、稽古風景のような感じでシーンに関わらないキャストは周りから芝居を眺めておりました。
普通に楽しんでました。

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写真

舞台写真

今回はゲンゴロウ一座の稽古場という舞台セットでした。前回『ジェットコースターが終われば』の抽象的でシンプルなセットとはまた違い、しっかりと建て込まれております。

シーンや時間帯によって様々な顔を見せます。

回想シーンなどは特に印象的な照明でした。

舞台下手においてあった演出机です。コチラには事務所につながる扉と仮眠室につながる階段が。

上手にはローテーブルとベンチ。そして小道具置き場があります。
コチラにはトイレもありますね。

本番前に集中力を高めるのはいつもトイレと決まってるんで…
藤波には欠かせない場所です。

シアター風姿花伝

劇場外観です。意外と看板が見えづらく、最初素通りしてしまうかも。

ロビー前にはかっこいいロゴが。
とても使いやすい劇場です。

棚橋明子

斉藤範子さん演じる棚橋明子の現代と回想シーンの違いです。

こっちが現代

こっちが回想
演じ分けもさることながら、出で立ちや動きも変わっております。凄い。

千秋楽トリプルカーテンコール

なんと千秋楽はトリプルカーテンコールをいただきました!
本当に、非常に嬉しいサプライズで、僕らが一番ビックリしてました(笑)

そして、今回25周年公演ということで、千秋楽カーテンコールには主宰の石山さんが舞台面に。

今回ゲスト出演してくれた劇団子創設メンバーの一人でもある五十嵐さんと。

全体写真

今回は生演奏のヴァイオリンを弾いてくれた奏者さんが日によって違ったので、全体写真も2枚。
こちらの写真は7日の公演を彩ってくれた小西智子さんとのもの。

こちらは前回公演同様、生演奏で参加してくれた斎藤千穂さんとのもの。
本当にありがとうございました!

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