遠くの空はカナダから、近くの海は瀬戸内海

レビュー
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オモテ
清水康栄プロジェクト#1 (旗揚げ公演)
『遠くの空はカナダから、近くの海は瀬戸内海』
[Cast]
前田将甫、三島冨美子 (劇団ZAPPA)、明石香織 (大沢事務所)、信田素秋 (開店花火)、村山 新、望月雅行 (劇団バルド)、池田久美、半澤敦史 (柿喰う客)、秋山美優、清水康栄 (開店花火)
[Staff]
作・演出:、清水康栄 (開店花火)
舞台監督:二階堂裕文
音響:田村あまね (アルコール過敏症)
照明:宮路央
広告:山本麻穂
製作:@round、松島有鶴 (ひつじ同盟)+清水康栄プロジェクト
[Time table] 青字=観にいった回
12月05日(金) 14:00/19:00
12月06日(土) 14:00/19:00
12月07日(日) 14:00
 [上映時間:約120分]
[Ticket]
前売/当日:1,500
(全席自由)
[Place]
Pit北/区域
(→ 王子駅徒歩3分)
[劇団 公式サイト]
清水康栄プロジェクト official website
http://sy-project.sakura.ne.jp/
[舞台概要]
開店花火所属の清水康栄によるプロデュース公演。
団体名に自らの名を冠したものの、全てが初めてづくし!
赤子です。
産まれたばかりのおっさんです。
でも、赤子だからこそ、未来を自由に創作する力がある。
そんな団体にしたいです。
…まあ、そんな大層なことしませんが。
(チラシ・公式サイトから引用)
[インプレッション]
引きこもり、自殺、近親相姦、ドラッグ、同性愛、依存症といわゆる一般的に触れにくいセンシティブなテーマをがっつりとリアルな会話芝居で見せてくれます。
しかしそこにあるのはあくまで”リアル”。極めて自然に、当たり前のように話しが展開していくので客がどこに感情移入していいのかをただ傍観しながら眺めている感じ。
客観的に書くとそうとう激しい内容なんだけど、それが淡々と展開していくのだから観ている方がだんだんと麻痺していくように傍観するしか出来ません。その事象に悩んでいたり、些細な気持ちの変化だったりをただただ、覗いているような。
出演している役者はみな本当にうまくて、とても自然にその演技を目の前で行ってくれます。しかし、そこに起こっていることや内容が、さも当たり前のように、引っかかりがなくなるくらいリアルにさらっと演じられていくので、言いたいことがなんなのか、だんだんとぼやけていくような感じがしてもったいない。
やりたいことだけだったら、もっと短く出来たはずだけども、とは言っても実際あの本のどこを削るべきなのかも分からない。全て描写には大切だったと思うとそう思えるし、無駄だったとも思えるから。そう思うのは、すべての芝居を見終わった時の何とも言えない気持ちからだろう。
テーマが全くつかめず、なんとも気持ちが悪いのだ。
逆に、もともとそういう演出だったとすれば狙いは大成功。こういう不条理劇に近い芝居は個人的に好きだが、好みが分かれる内容なので進められるものではない。ではないが、何を感じたのかを話し合うには十分に楽しめるパワーを持った作品だと思う。
ストーリーとしては最終的に全て崩れていくほかない、というか”それ”はおそらく客のほとんどが終盤になってだんだんと分かっていた事だろう。終わるにはそれしかないだろうと。
結局、各人物が立ち振る舞っているその環境は、ちょっとバランスが悪くなるとあっという間に崩れてしまう”バベルの塔”のような脆い盤上での事だったんだと思えた。
このテーマを、言ってしまえばだらだらと、淡々とこなしていて全くチープに見えないのは、役者の腕に他ならない。はっきり言って、演じる役者が全員にその空間を引っ張る力がないとこの作品は客が芝居終わりの時間を待ち臨む舞台になってしまう。
決してエンターテインメントではないが、多少分かりやす過ぎても内容やテーマをしっかりと伝える力が必要なのだと思う。それが出来なくては、舞台は演出家のただの自己満足による、自己表現の場になってしまうのだから。
しかし、それをしっかりと最後までテンションを保ちつつ見ることができるのは力強い役者の芝居に他ならない。
評価:★★★☆☆

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