レミーのおいしいレストラン

この記事は約6分で読めます。

邦題:レミーのおいしいレストラン
原題:RATATOUILLE
監督:ブラッド・バード
製作総指揮:ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
脚本:ブラッド・バード
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:パットン・オズワルト、ルー・ロマーノ、ブライアン・デネヒー、ブラッド・ギャレット、ジャニーン・ガロファロー、イアン・ホルム、ピーター・オトゥール
<日本語吹替え> 岸尾だいすけ、佐藤隆太、甲斐田裕子、麦人、浦山迅、他
データ:2007年/アメリカ/90分 [ブエナビスタ インターナショナル (ジャパン)]
鑑賞方法:TOHOシネマズ南大沢 (8番シアター) [先行レイトショー] 日本語吹替え版鑑賞
評価:★★★★☆

[ストーリー]
料理が大好きで、一流レストランのシェフになることを夢見るネズミのレミーは、ある日、尊敬する料理人グストーの店にたどり着く。そこで働くシェフ見習いのリングイニがヘマをして、スープを台無しにしてしまう。その様子を見ていたレミーは、キッチンに入り込み、見事にスープを作り直すが、その姿をリングイニに目撃され……。
(シネマトゥデイ)

[インプレッション]
ずっと版権争いをしていたディズニーの、ピクサー完全買収による仲直り後、初の長編アニメーション作品になります。しかも、“ネズミ”が主人公といういろんな意味での注目作。前評判は非常に良いので期待して先行レイトショーを観にいきました。

ストーリーは料理の才能を持ったネズミが見習いシェフと手を組んですばらしい料理を作っていく・・・とまぁ、ここまで書くとわかるかと思うんですが、その料理は紛れもなく美味しいのでフランス料理界に旋風を巻き起こします。しかしその料理は見習いシェフが作ったものと思い込まれているので、さまざまな問題が生じて・・・といった、まぁべたべたな内容です。

向こうの人は料理番組や料理ドラマがないんじゃないかと思うほど演出構成がベタです (料理マンガは100%ないだろうし)。しかしながら、見せ所はうまく、なるほど脚本のお手本のような内容で、とても素晴らしい。が、料理モノをさんざん見てきた人からするといわゆるお約束であり、特にひねりのない展開は子供向けという概念を差し引いても少しありきたり感は否めません。

ディズニーの映画ということか、ところどころでレミーが言われるせりふ「盗みは駄目だ!」。いや、ネズミが盗むことに対してとても敏感なのはどうだろうと、少し押し付けがましく感じてしまったのは残念。これでもかというくらい言われるたびに、伏線以上の力を感じてしまいました。伏線でも出てくるけど。

最近のニュースでは今後ディズニー映画では、喫煙描写も控えていくようですし、エンターテインメント業界での表現規制がどう影響を与えるのか興味はありますが、あまりがんじがらめにして欲しくないと思う気持ちも。要は見せ方の問題。
そんなことよりも部屋中にショットガンをぶっ放しまくるばあさんや、たまたま通りがかったカップルの痴話げんかの最中での発砲シーンなど、こういった銃社会の描写はどうだろうと感じざるを得ないのであった。

映像面での話も少々。CG表現は素晴らしく、ネズミの毛並みがとても細かい。水に濡れた時やもみくちゃにされた時のネズミの質感がイヤらしいほど出てます。表現の自由さという点では車に意思を持たせ喋らせた『カーズ』ほどではないにしても、多彩な手法で見せてくれてまったく飽きない。どちらかというとややリアル路線。

レミーは想像していたよりもよっぽどしっかりしていて、ピクサーにしては久しぶりのかっこいい主人公にあたると思う。頭が良すぎるくらいのネズミである。もちろんネズミ云々の話ではないが、人の描写はピクサー唯一の人間が主人公の話『Mr.インクレディブル』に近い表現手法。特徴が良く出ていて面白かった。

本作の邦題は『レミーのおいしいレストラン』だが、原題は『RATATOUILLE』である。フランス語で読みは”ラタトゥイユ“。いわゆる野菜の煮込み料理のことで、フランス南部でも一般的な家庭料理の一つなのだが、なぜこの題名なのかは作中でわかるだろう。しかし、どうして邦題を変えてしまったのか? このままでも全然良かったと思うし、”レミーのおいしいレストラン”ではなんとも語呂が悪い。今までの作品ではすべて原題のまま公開してきたのに、だ。

日本人に馴染みが浅いと思われる”Finding”という単語ですらそのまま『ファインディング・ニモ』の邦題で使っていたというのに。『モンスターズ・インク』にいたっては株式会社をあらわす”Inc.”をそのまま”インク”と読ませている経緯もあるが、いったいどうしてしまったのか。
どうも今作から、子供向けのイメージが必要以上にが付きまとっている感じだ。邦題もシンプルに『レミーのレストラン (Remy’s Restaurant)』で十分意味が伝わるのに、わざわざ”おいしい”などと入れているあたりプロモーションの意図を感じざるを得ない。

しかしながら、十分なクオリティと安心して楽しめる内容であり、ビジュアルはため息が出るくらい。ディズニー&ピクサーのブランドを冠するにふさわしい完成度でした。
個人的にはピクサー次回作の『WALLE/ウォーリー』が気になってしょうがない。劇場予告ではタイムトラベルした未来世界がとてもきれいで、SF好きにはとてもそそられました。

【※】 以下、ネタバレ注意!! (未鑑賞の方は閉じてください)

そもそも、「料理をするネズミ」というテーマ自体が冒険だったと思う。有名レストランにネズミが出入りしているというシチュエーションが、わかっていてもどうしても衛生的に気になってしまう。終盤の仲間ネズミ大集合も中国のネズミに占拠された島を思い出してしまった。もちろん体を洗ったり消毒している描写はあるが、下水とかに住んでいるネズミ達が高級料理を作って何も言わずに客に出しているのがどうしても引っかかってしまう。

だいたい、最後のウェイターになったリングイニはなぜいきなりローラーブレードの才能を発揮しているのか。はじめからそっちの仕事やれよ!! と突っ込んでしまう。「前からこれだけは得意なんだ」とか、何らかのフラグ (伏線)が張ってあれば納得できるんだが、ローラーブレードを使っているのはインサートでの彼女とのデートシーンでちょこっと出たのみだし。何しろ唐突過ぎる。個性豊かな厨房のメンバーも結局ネズミ達の協力が見せたかったから退場してもらいました的な見せ方だし、その後のフォローがまったくないのはいただけない。

まぁ、一番の突っ込みどころはなんといっても冒頭のばあさん。自分の家の中であれだけショットガンぶっ放して、なんだあのテロっぷりは。たかがネズミ2匹相手に完全にイッちゃってるよヤバイヨ。その挙句家が半壊して、そりゃある程度は自分の責任ですけど、ああなったら完全にネズミの被害者じゃないですか。「盗みは良くない!」とかいってるレベルじゃないですよもう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました