父親たちの星条旗

レビュー
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ポスター
邦題:父親たちの星条旗
原題:FLAGS OF OUR FATHERS
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、スティーヴン・スピルバーグ、ロバート・ロレンツ
脚本:ポール・ハギス、ウィリアム・ブロイレス・Jr
原作:ジェイムズ・ブラッドリー、ロン・パワーズ 『硫黄島の星条旗』
音楽:クリント・イーストウッド
撮影:トム・スターン
編集:ジョエル・コックス
出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ
データ:2006年/アメリカ/132分 [ワーナー・ブラザーズ]
受賞:第49回ブルーリボン賞、第30回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞受賞作品
鑑賞方法:レンタルDVD
評価:★★★☆☆
[ストーリー]
 第2次世界大戦の重大な転機となった硫黄島の戦いで、米軍兵士たちはその勝利のシンボルとして摺鉢山に星条旗を掲げる。しかし、この光景は長引く戦争に疲れたアメリカ国民の士気を高めるために利用され、旗を掲げる6人の兵士、ジョン・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)らはたちまち英雄に祭り上げられる。
(シネマトゥデイ)
[インプレッション]
名俳優と言うよりも、もはや名監督の名が定着しつつあるクリント・イーストウッド監督による戦争映画。しかも今作の題材は「第二次世界大戦中もっとも多くの血が流された戦闘」といわれる”硫黄島の戦い”を描いたもの。
戦闘シーンの凄惨さは『プライベート・ライアン』の冒頭シーンに匹敵するほど凄まじく、よくR指定がかからなかったなぁと心配しながら見てしまうほど。
しかし、この物語は、戦闘シーンそのものよりも戦争において「英雄」として祭り上げられた人物の心理描写に重きを置いている。
戦場を離れたあとも、回想シーンのように幾度となく硫黄島の戦闘が思い出されるのだが、とにかく一言では言い表せない「戦争という行為」のなかを生き抜いてきた人物の心理状態を丁寧に書いている。悲しみとか、高揚感とか、やるせなさなんてモノではない、もっと混沌とした感情が前編にわたってメインの語り部の口から語られていく。
それはまるでドキュメント映画を見ているように細かく丁寧で、まったくエンターテインメントとは正反対の描写であってそちらを期待して観てしまうと面白みもないものに見えてしまうだろう。味気ない展開のようでしっかり内面と当時の社会の様子、そして現場の殺し合いを描いていくやりかたは緻密でいて、飽きずに見届けようと思えるしっかりとしたパワーがある。
そういったある人物からの視点で「戦争」を考えさせられると、全体の主観としての”悪”や”正義”なんてものはどこかに吹き飛んでしまうちっぽけな感情だということがよく分かる。戦争とはこういうモノなのだ、と。
本作では敵として画かれている日本兵が必死に殺しにかかってくる様はいささか不思議な気持ちではあるが、それとして一視点から見た”戦争”の真実なのだろうとすら思える。
そして、今戦争のないこの国に生きることが出来て本当に良かったと思う事が出来る。
立てられた星条旗の正否や数なんて国にしてみれば全く、本当に些細なことであってなんの問題もないことなのだが、実際にそこにいた本人達にとっての星条旗は、アメリカ国民が英雄の象徴として見た幻のようなものでしかないと思う。
原題の『FLAGS OF OUR FATHERS』は、星条旗が”複数形”になっているのも、そういった意味も含まれているのだろう。是非注目していただきたい。

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